宗次郎オリジナルアルバム第9作
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おだやかな作風のアルバム。サウンドデザイン時代最後の作品。
通販BOX商品『こころのうた』第十集「組曲・日本の四季」と同じ曲目・構成のアルバム。
発売日:1991.8.25(サウンドデザイン)
プロデュース:南里高世(TAKA NANRI)
作曲:南里高世
共同作編曲:大沢教和
<レビュー>
①Indigo Blue(『組曲・日本の四季』では「序章」)
オカリナ・ソロ(独奏)で始まる曲。ニ短調のシンプルだが力強いメロディーが印象的。
『フレッシュ・エアー』版のアレンジは間奏が長くやや冗長な印象。『組曲・日本の四季』版「序章」の方が、はるかにクオリティーが高いアレンジとなっている。そちらのアレンジでは、シンセサイザーのパーカッション音(打楽器音)を非常に効果的に使い、幻想的な仕上がりとなっている。『フレッシュ・エアー』版と『組曲・日本の四季』版とで、最もアレンジが異なるのは、この曲である。
②木漏れ日
この曲も1曲目と同じく、『組曲・日本の四季』版のシンセサイザー・アレンジの方が良い。
曲の後半、短調から長調に転調してからのメロディーが、印象的で美しい。(あくまでざっくりとした説明だが、短調のメロディーは哀しい感じやほの暗い印象、長調のメロディーは明るい感じや爽やかな印象を与える)
③望郷
この曲を聴いて、思わず「も~~い~くつね~る~と~」と口ずさんでしまった人は多いかもしれない。何度聴いても、滝廉太郎の曲にそっくりなメロディーである。もっとも、似ているのはAメロ(主旋律の最初の部分)だけではあるが…。
④春の想い
郷愁感あふれる美麗な曲。
美しい3拍子系のメロディーが秀逸で、耳を傾けていると、じんわりと心にしみていく感じがする。この曲を聴いていて、幾度か涙ぐんでしまったことがある。
⑤陽春
この曲を聴くと、散り際の桜をイメージする。
ハラハラと花びらを散らしていく、桜の古木…そんな無常観を感じさせるメロディーと、オカリナの音色がとてもマッチした曲。
⑥夏草
このアルバムで一番のお気に入り。宗次郎作品での“さわやか系”の曲の典型だが、とても清々しい曲で、青々と風に揺れている草原が、目の前に広がるかのよう…。
シンコペーション(リズム・拍の強弱に変化をつける技法)を使ったサビのメロディー(曲の中で一番盛り上がったり、印象に残る部分)が秀逸。
この曲も『フレッシュ・エアー』版より『組曲・日本の四季』版のアレンジの方が良い。『組曲・日本の四季』版では、パーカッションをうまく使ったアレンジだったが、『フレッシュ・エアー』版のアレンジでは、パーカッションが省略されている。
⑦入江のほとり
ゆるやかな6拍子系の曲。タイトル通り、夏の昼下がりに、入江のほとりで寝そべって、海に浮かぶ船やヨットをのんびりと眺めているようなイメージの曲。とても牧歌的な雰囲気の曲。
⑧浮雲
7曲目とは打って変わって、物悲しい雰囲気の曲。
秋の高い空を流れていく雲を、憂いをこめて見つめているような…そんな哀愁を感じさせる曲。
⑨晩秋
この曲のイメージは、まさに晩秋の夕暮れ時に、真っ赤に色づいた紅葉の下にたたずんでいるような、静かに沈思するかのような曲調が印象的。
またまた『フレッシュ・エアー』版より『組曲・日本の四季』版のアレンジの方が良い。特に『組曲・日本の四季』版では、シンセサイザーによる間奏部のアレンジが秀逸。
⑩Fresh Air(『組曲・日本の四季』では「終章」)
8曲目、9曲目と短調の哀しげな曲調が続いた後なので、この長調のラストの曲には、どこか解放感がある。優しいメロディーラインが印象的。
曲の後半は、宗次郎さんのオカリナは入らず、オカリナ以外の楽器で余韻を残しつつ幕を閉じる。
このエピローグの部分では、『フレッシュ・エアー』版ではオカリナっぽい音が入るが、これはシンセによる音と思われる。ちなみに『組曲・日本の四季』版にはこの音はない。
もし宗次郎さんが、『フレッシュ・エアー』制作時にサウンドデザインに在籍していたならば、わざわざシンセの音でオカリナの疑似音を入れずに、宗次郎さん自身により録音すれば済む話で、その辺りからも、『フレッシュ・エアー』が『組曲・日本の四季』よりも後に作られたものであると推測している。
<総評>
別の記事(『フレッシュ・エアー』のレビューの前に触れておきたい、宗次郎さんの幻のアルバム『組曲・日本の四季』)に書いた通り、『組曲・日本の四季』と『フレッシュ・エアー』は、アレンジ・編曲が異なること以外は、ほぼ同じ内容なのだが、両作共に言えることは、デビュー作『グローリー・幸福』の作風に回帰しているということである。
静かで優しく、あたたかさが感じられる作品に仕上がっている。
サウンドデザイン時代の宗次郎さんのアルバムは、『グローリー・幸福』から始まり、次第にスケール・アップして行き、ポップ・ロック路線を経て、再び原点回帰をして、この『フレッシュ・エアー』が最後の作品となった。
宗次郎さんにとって、この初期・サウンドデザイン時代は、ある意味、南里高世さんの元での修行の時代であったと言えるかもしれない。
この時代に培ったアーティストとしての活動を基礎にしつつ、サウンドデザインからついに独立し、さらに発展をとげて行く。
そして次作『木道』からは、いよいよ、宗次郎さんセルフ・プロデュース作品の幕開けとなる。