宗次郎オリジナルアルバム第8作
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オカリナとシンセサイザーを中心にしたシンプルな作品。ニューエイジ路線回帰作。
発売日:1990.10.25(サウンドデザイン)
プロデュース:南里高世(TAKA NANRI)
作曲:南里高世
共同作編曲:大沢教和、南里元子(⑤)(JASRAC作品データベース表記による)
<レビュー>
①春・せせらぎ
このアルバムで一番のお気に入りの曲。ゆったりとしたメロディーながら、まさに小川のせせらぎを思わせるかのような、シンセサイザーのアレンジ・編曲が秀逸。
春の日差しの中で、川面がキラキラと輝いているような情景が、目に浮かんでくる。
正直なところ、自分はこの「春・せせらぎ」と、6曲目「花の精」を聴くためだけに、『イメージス』を聴くことが多い。
②冬の雲
メロディーもアレンジも、それほど個性がなく、あまり印象には残らない曲。
1曲目が傑作なので、そこからの落差を感じてしまう。(リスナー・聴衆の好みにもよるとは思うが…)
③そよ風
ピアノの音が印象的なアレンジの曲。サビ(曲の中で一番盛り上がったり、印象に残る部分)のメロディーがキャッチーで親しみやすい。
④秋桜
さだまさしさんの曲とは無関係。
ただ、どことなくフォークソングっぽい感じのメロディーの曲だと思う。もし、さだまさしさんと宗次郎さんがコラボしたら、どんな風になるだろうと、勝手に想像したりする。
⑤朝日の中で
アルペジオ(分散和音)が印象的なアレンジ。
南里高世さんの奥さん、南里元子さん作曲による曲。…だが、う~ん。このお二人、南里高世さん元子さんご夫妻は、本当に素晴らしいプロデューサーだと思うし、喜多郎さんと宗次郎さんを人気アーティストに育て上げた功績も素晴らしいし、深い敬意も感じるのだが、いざ作曲家として聴いた時には、曲にもよるが、全体的に素人っぽいメロディーラインだなあと思ってしまうことも多い(特にこの曲のようなタイプ)。
大変失礼な言い方かもしれないが、“芋くさい”感じのメロディーだなあと…。
(南里夫妻のファンの方が、もしこの記事を読んでおられるとしたら、本当にごめんなさい。もちろん、名曲「道」や「精霊の森」など、南里高世さん作曲の作品でも素晴らしい名曲ももちろんあります。ただ、全体的な印象としてはそういう感想を抱く作品も多いという話です)
⑥花の精
宗次郎さんのオカリナはごく一部のパートのみで、大部分がシンセサイザーの曲。
だが、ヒーリング系のシンセサイザー音楽として素晴らしい傑作。1曲目の所にも書いたが、「春・せせらぎ」とこの「花の精」を聴くためだけに、このアルバムを聴くことが多い。
これまでの宗次郎作品では、幻想的な曲調はあったものの、この曲のようなメルヘンチック・ファンタジックなヒーリング曲は無かった。隠れた名曲と言える。
⑦雨
ピアノの音が印象的。まるで雨粒を表現しているかのよう…。オカリナの対旋律(主旋律に対して寄り添うような、もう一つのメロディー)をピアノが奏でるアレンジが秀逸。
⑧旅の終わりに
シンセサイザーの音によるアルペジオ(分散和音)が印象的なアレンジ。
英語のサブタイトルでは、“The Sunset”となっているが、どこか寂しげな感じもする曲である。
<総評>
『ハーモニー』『ヴォヤージ』と、ポップ・ロックな作風への志向を強めてきた“南里高世feat.宗次郎”。
この4作目『イメージス』では大きく方向転換し、原点のヒーリング・ニューエイジ路線に回帰…したのは良かったのだが、傑作と言えるのは、1曲目「春・せせらぎ」と6曲目「花の精」のみで、他の曲は全体的に個性が弱く、強烈な印象はあまり残らないアルバム。
聴いた際の、高揚感や満足感がもう一つな感じがする。(あくまで好みによるものかもしれないが…。もし『イメージス』が大好きな方がこの記事を読んでおられたら、こんな意見もあるのか…程度で読み流して下さい)
これはあくまで推測なのだが、宗次郎さんはこのアルバムの頃から、サウンドデザインから独立して、セルフ・プロデュースすることを模索しておられたのではないかと思う。
元々、宗次郎さんが行いたかった活動は、自分で作曲した曲を演奏することだと思う。(『グローリー・幸福』のように)
なので、『フォレスト』以降の本作『イメージス』に至るまで、南里高世さんが作った曲しか演奏させてもらえず、いくら自分を育て上げてくれた恩義があるとはいえ、自分で曲を作りたい、自分の曲を吹きたいという不満が、溜まっていったのではないかと思う。(その心情は、自分自身も曲作りをする身として、痛いほどわかるし、その気持ちは想像できる)
実際のところ、オカリナの音色の魅力を、最大限に引き出したメロディーを作るという点では、南里高世さんよりも、宗次郎さんの方が作曲能力は上だと断言できる。(サウンドデザイン時代のアルバムと、『木道』以降のアルバムを聴き比べれば、一目瞭然と思う)
宗次郎さんは、自分ならこんなメロディーにする、自分ならこんな曲を書くと思いながら、南里さんが作った曲を演奏されていたのではないだろうか。
この辺りの、宗次郎さん独立に至るまでの経緯は、宗次郎さんのホームページにも、サウンドデザインのホームページにも載っておらず、調べても情報は出てこないので、わりと触れてはいけない、タブーなことなのかもしれない。
ただ、この『イメージス』からは、『心』や『フォレスト』の頃のような、モチベーションの高まりを曲からは感じられないので、もしかしたら、そのような背景があったのではないだろうかと、聴く度に考えてしまう。
☆版権元サウンドデザインのYouTubeチャンネルより(公式動画)
「春・せせらぎ」(1曲目)
「花の精」(6曲目)