2000年のNHKスペシャル『四大文明』の後、2014年の“シンフォニック・ワールド・ツアー”コンサートが開催されるまでの間、喜多郎さんは、奈良・薬師寺で野外コンサートを開かれたり、四国八十八ヶ所のお寺の鐘の音を取り入れたアルバム『空海の旅』シリーズの制作など、精力的に世界的規模での活躍を展開しておられました。
特に、『空海の旅』シリーズは、発表される度にグラミー賞にノミネートされ、その他『インプレッションズ』『ファイナル・コール』といった作品でもノミネートされ続けておられました。
ニュース記事などでも(ごく小さい扱いながら)紹介されているのを、チェックしたりしました。
自分自身、2005~2007年頃に、一時期ニューエイジ・ミュージックの活動から、少し離れかけた時期がありましたが、喜多郎さんと久石譲さんは変わらず、その時期も聴きつづけていました。
2008年以降、本格的にニューエイジ・ミュージックの活動に復帰してからは、自分自身の音楽性を見つめ、より深く追求する上で、原点回帰することにしました。
(詳しくは、こちらの記事も参照→姫神・星吉昭さんの音楽⑤)
自分が音楽家を志し、音楽の勉強を始めた中学~高校生の頃に影響を受けた音楽家の作品を、今一度聴き直し、また演奏会にも足を運ぼうと考えました。
喜多郎さん、久石譲さん、宗次郎さんのコンサートに、それぞれ数年~約20年ぶりくらいに行きましたが、まずその先鋒となったのが、2014年9月の喜多郎さんのコンサートでした。
ちょうどその年、喜多郎さんは、初のオーケストラとの共演コンサート“シンフォニック・ワールド・ツアー”を全世界で開催されており、日本では、9月25日に名古屋、9月28日に長野・大町の2公演が開催されました。
僕はこの内、名古屋公演に行くことにしました。
会場は、愛知県芸術劇場大ホール。
(愛知県と言えば、喜多郎さんの故郷ですね。喜多郎さんは愛知県豊橋市出身です)
コンサート・ホールで聴く喜多郎さんのコンサートは、1994年のマンダラ・コンサート以来20年ぶりでした。
そのマンダラ・コンサートのトラウマ(喜多郎さんの音楽②参照)から、ずっと喜多郎さんのコンサートを避けてきていた自分が、なぜ行く気になったのかと言うと、やはり、喜多郎さんのシンセとオーケストラとの共演を、生で見てみたい聴いてみたいと考えたのが、最大の理由でした。
(さらに言うと、オーケストラとのコンサートならば、マンダラの時のようなロック・テイストなコンサートではないだろうと、にらんだからでもあります)
開演は18:30。
名古屋市内に宿をとり、会場へと向かいました。
コンサートは2部構成となっており、第1部は喜多郎さんと5人の演奏者による、計6人での演奏で、シルクロードの曲などを中心に。そして、第2部がオーケストラとのジョイント・ライブで、『古事記』のオーケストラ・バージョンを中心としたプログラムでした。
この日のコンサートは、皇族方より、寛仁親王妃信子さま臨席のもと、開演されました。
コンサート1曲目は、喜多郎さんと喜多郎さんの奥さん(当時)の高橋恵子さんのお二人だけの演奏で、アルバム『Thinking of you』より「マーキュリー」が演奏されました。
恵子さんがシンセでハープの音を鳴らして伴奏し、喜多郎さんがインディアン・フルートを吹かれました。
(↓喜多郎さんのYouTube公式チャンネルより)
この喜多郎さんの笛の音は、僕の心を強くとらえました。
澄んだインディアン・フルートの音色に耳を傾けていると、自然と目から涙があふれてきました。とても感動しました。
今思えば、僕自身の現在の活動“ヒーリング・ホイッスル”につながる伏線が、すでにこのコンサートにあったと言えるかもしれません。
「マーキュリー」に続いて、「シルクロード」や「キャラバン・サライ」、アルバム『OASIS』の曲など、喜多郎さんの初期の頃の名曲が披露されました。
編成は、喜多郎さんと高橋恵子さんのシンセサイザー、この日のコンサートの指揮とオーケストレーションを務めたステファン・スモールさんのキーボード、ヴァイオリン、ベース、ドラムスという6人編成での演奏でした。
この日は、1994年のマンダラ・コンサートとは大きく異なり、とても落ち着いた感じのバンド演奏でした。個人的に、求めていたタイプの作風の演奏で、大満足でした。
そして、いよいよ、オーケストラとの共演となる第2部。この日のオーケストラ演奏を担当するのは、東海学生オーケストラでした。
まずはアルバム『古事記』より、「太始」~「創造」~「恋慕」~「大蛇」と演奏が繰り広げられました。
普段CDで聴いている、アルバム・バージョンのアレンジを元にしつつ、アコースティックなオーケストラ・サウンドをメインにしたアレンジは新鮮で、大変聴き応えがありました。
伴奏の大部分はオーケストラが担いますが、メインのメロディーなど主要パートは、喜多郎さんがシンセで演奏されていました。
「大蛇」まで披露した後、アルバム『古事記』の曲順では「嘆」になるところですが、この日は、「天と地」「シンキング・オブ・ユー」の2曲が演奏されました。
この内、「シンキング・オブ・ユー」は、この日の曲の中では最も、アルバムの原曲版とは異なる雰囲気になっていました。
「シンキング・オブ・ユー」は、元々抒情的なタイプの曲でしたが、柔らかなアコースティック感のあるオーケストラ・サウンドにピッタリとはまり、大変美しい演奏となっていました。
その後、再び『古事記』の曲へ。
「饗宴」と「黎明」が披露されました。
「饗宴」は和太鼓が入らない代わりに、ティンパニのサウンドを効果的に使ったアレンジとなっていました。
そして、一つ気付いたことがありました。
「饗宴」の演奏の際、いつもなら主旋律を、笛系(尺八風のサウンド)の音色を使って、喜多郎さんは演奏されておられるのですが、この時は機材トラブルがあったのか、いつものシンセ・リード(アナログ・シンセKORG700Sの音色)のみで、主旋律を演奏されていたのが印象に残りました。
(CD『シンフォニー・ライブ・イン・イスタンブール』では、ちゃんと笛系の音で演奏されているので、やはりあの時は、何らかの機材トラブルがあったのかもしれません)
「黎明」は、アルバムの原曲版では、シンセ・コーラスがイントロを演奏していますが、この日のオーケストラ・アレンジでは、フルートがイントロの旋律を奏でていました。
このオーケストラ版「黎明」は、アルバム版のようにエレクトリック・ギターは入りませんし、ドラムの音も、やや控えめな感じでしたが、その分、メロディーラインの抒情性が活かされた大変美しい演奏で、心に残りました。
喜多郎さんが初めて、オーケストラとともに生演奏する“シンフォニック・ワールド・ツアー”。
その愛知公演を目の前で聴けて、大変満足でした。
「やはり、喜多郎さんの音楽は素晴らしい!」
感動で胸がいっぱいになった演奏会でした。
実はこの“シンフォニック・ワールド・ツアー”、ライブCD化もされています。
同ツアーの内、2014年3月4日に、トルコ・イスタンブールでのコンサートの模様を収録したアルバムで、『シンフォニー・ライブ・イン・イスタンブール』というCDです。
名古屋でのコンサートの感動を振り返るべく、もちろん購入。何度も何度も聴く愛聴盤となりました。
(ちなみに、このライブ・アルバムは、第57回グラミー賞ニューエイジ・アルバム賞にノミネートされました。惜しくも受賞はなりませんでしたが、喜多郎さんの代表曲・名曲が1枚で堪能できるとあって、喜多郎さんの音楽の初心者の方や、初めて喜多郎さんの曲を聴くという方に、強くお薦めしているアルバムです)
実に20年ぶりだった、コンサート・ホールでの喜多郎さんの演奏会。
前回(1994年マンダラ・コンサート)とは異なり、個人的な嗜好に見事にはまった、記憶に残るコンサートとなりました。
また日本で、喜多郎さんがコンサートをされる際には、行ける機会があれば、ぜひ聴きに行きたいと思いました。
そんな僕が、次に喜多郎さんのコンサートに行くのは、3年後、2017年8月のことでした。
<⑦ついに、あの、憧れの喜多郎さんと対面!そして握手!(2017年)につづく>
※今回の記事で紹介した喜多郎さんのアルバムが、喜多郎さんのYouTube公式チャンネルで公開されています。
<今回紹介したアルバム>