NHKスペシャル『四大文明』が放送されたのは、2000年7~8月にかけて。
全5集からなる、NHKの大型プロジェクトで、音楽は喜多郎さんが担当。NHKの大型ドキュメンタリー番組としては、1980年の『シルクロード』以来、20年ぶりとなりました。
テーマ曲「母なる大河」では、喜多郎さんのシンセのほか、ロンドン・フィルハーモニーとカウンターテナー歌手のスラヴァさんが参加。壮大なシンフォニック・サウンドが印象的な曲でした。
(↓喜多郎さんのYouTube公式チャンネルより)
放送に先駆けて、NHKのトーク番組『スタジオパークからこんにちは』に、喜多郎さんが出演されました。
それは、2000年の7月4日のことでした。
『四大文明』の第1集の放送を間近に控え、番組を宣伝する狙いもあったかと思われますが、『四大文明』サントラ制作秘話だけでなく、喜多郎さんの生い立ちや、これまでの人生、活動なども、本人のトークを交えて紹介されており、ファンとしては、大変見応えのある内容でした。
また、スタジオでの生演奏で、喜多郎さんはインディアン・フルートの演奏を披露されました。
その美しく澄んだ笛の音色は、スタジオの人々を魅了していました。笛好きの自分にとっても、大変印象深い演奏でした。
(この放送はビデオに録画し、その後、DVDに焼き直して保存しています)
トークの中で、特に印象に残ったのは、喜多郎さんが“人生のターニングポイント”だったと語った、高校卒業時のエピソード。
商業高校に通っていた喜多郎さんは、高校時代に音楽を始め、ロック・バンドの活動に熱中するようになり、卒業時も、音楽の夢を捨てきれず、就職をめぐって親御さんとケンカしたりしたそうです。
(ちなみに、“喜多郎”という名前は、この高校時代のニックネームが元で、長髪にし始めて、その姿が“ゲゲゲの鬼太郎”っぽいということから、“キタロー”と呼ばれるようになったそうです)
親御さんとのケンカの末、一旦は、とある楽器メーカーに就職することに決めたそうです。
そして、入社日には、親が車で会社の門前まで送り届け(つまり、入社から逃げないように)、親の車が目の前から走り去って見えなくなってから、くるりと方向転換。
「やはり、音楽で生きていきたい!」と、会社の門はくぐらずに、そのまま家出をして、アルバイトをしながらバンド活動・音楽活動を続けることにした、というエピソードです。
このエピソードは、喜多郎さんの著作の中でも触れられていて、ご本人によると、人生のターニングポイントだったと位置付けているそうです。
その後、上京した喜多郎さんは、様々なアルバイト(港湾作業や土木工事、板前見習いなどなど)をして生計を立てつつ、アルバイト以外の時間をフルに使って音楽活動を続行。
そして、プログレッシブロック・バンド(ファー・イースト・ファミリー・バンド)に参加した後、ソロ活動へ。
やがて、シルクロードのプロデューサーとの出会いが訪れた、というお話でした。
(ちなみに、入社せずに家出をした日、会社からは自宅に「おたくのお子さん、来てませんけど…」という連絡が入って、親御さんは、喜多郎さんが就職せずに行方をくらましてしまったことを知ったそうです。その後しばらくしてから、「元気にやってます。頑張ってます。」と、喜多郎さんは家に連絡を入れるようにしたとの事でした)
この喜多郎さんのエピソードを聞いて、とても勇気づけられ、励みになりました。
当時の僕は、音楽系大学を卒業したものの、生計をたてるため、音楽とは直接関係のない仕事をしながら、仕事以外の時間を存分に使って、音楽を続けていきたい、作曲活動を続けていこうと決心していた頃でした。
色々と悩むこともあったわけですが、喜多郎さんが、そのエピソードをTVで語られるのを見て、勇気が湧きました。
今、こうして、ヒーリング・ホイッスルの音楽活動を行ったり、作曲を続けて来られたのは、この時の喜多郎さんのお話のおかげだと言っても、過言ではありません。
喜多郎さんのお話からは、とてもとても大きな力を頂けたと思って、感謝しています。
この『スタジオパークからこんにちは』と、NHKスペシャル『四大文明』は、自分にとって、大変印象深いものとなりました。
その後、『四大文明』のサントラでもある、アルバム『ANCIENT』と『An Ancient Journey~永遠の時を』を購入。
こちらも、何度も聴く愛聴盤となりました。
NHKスペシャル『四大文明』関連のアルバムは、『古事記』や『マンダラ』のような、シンフォニック・ロック的な、ドラマチックな路線のアルバムとは異なり、ドキュメンタリー番組の音楽らしく、ミニマル系のサウンドや、一曲一曲が個性的なサウンドを持つタイプのアルバムでした。
前作『Thinking of you』や、『シルクロード』のサントラの頃の路線に近いアルバムと言えます。
サウンドやアレンジはより洗練され、高いクオリティを味わえる、見事な良作となっていました。
実は僕自身、喜多郎さんの作品の中では、この『四大文明』やその前後、『Thinking of you』など2000年前後あたりの頃の作風が一番好きです。
もしかしたら、喜多郎さんのファンの中では、どちらかと言うと少数派になるかもしれません。
やはり、『古事記』『ザ・ライト・オブ・ザ・スピリット』の頃、あるいは『シルクロード』後期~『千年女王』辺りの頃が好きという方が多いのではないかなと思います。(ちょうど、1980年代から1990年前後の時代あたりですね)
でも、僕は、90年代後半~00年代前半、特に2000年前後の頃の作風が好みです。
作品で言うと、『サーキュ・インジュヌー』『Thinking of you』や『四大文明』関連、『空海の旅』1~2あたりの作品が挙げられます。
さて、こうして『四大文明』の音楽に親しみ、喜多郎さんの『スタジオパーク…』出演の録画を何度も見返したりしていたわけですが、喜多郎さんのコンサートに関しては、1994年のマンダラ・コンサートのトラウマがあり、聴きに行くことはしていませんでした。
(喜多郎さんのコラム第2回の記事を参照)
そんな僕が、再び、喜多郎さんのコンサート・ホールでのコンサートに出向くのは、マンダラ・コンサートからはちょうど20年後。2014年のことでした。
それが、喜多郎さんがオーケストラと共演する、“シンフォニック・ワールド・ツアー”の日本公演でした。
<⑥喜多郎さんとオーケストラの共演!“シンフォニック・ワールドツアー”のコンサートへ(2014年)につづく>
※今回の記事で紹介した喜多郎さんのアルバムが、喜多郎さんのYouTube公式チャンネルで公開されています。
<今回紹介したアルバム>
①NHKスペシャル『四大文明』サウンドトラック