久石譲×宮崎駿監督作品・第3作『となりのトトロ』
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優しく温かく、ときにファンタジックな「となりのトトロ」サントラ集。
発売日:1988.5.1(発売元:徳間ジャパンコミュニケーションズ)
Produced by Joe Hisaishi
作曲・編曲:久石譲
編曲:平部やよい(2、10後半、15後半、16、17、18)
編曲:武市昌久(20)
<レビュー>
①さんぽ~オープニング主題歌~
・作詞:中川李枝子
・歌:井上あずみ
イメージ・ソング集にも収録されている「さんぽ」のサントラ・バージョン。
アレンジや曲調はイメージ・ソング版とほぼ同じだが、違う点としては、イメージ・ソングで参加していた杉並児童合唱団の歌声は無く、井上あずみさんが一人で歌っていること。そして、イントロが違うという点である。
パーカッションの音だけだった、イメージ・ソング版のイントロ・出だしとは異なり、サントラ版は、バグパイプ風の印象的な音色とメロディーが追加され、その点が大きな特徴となっている。
この部分は、ちょうど映画冒頭の、小トトロが歩いた跡からドングリが芽を出してくるカットに相当している。
まさに、絵と音が一体となって、“これから物語が始まるよ!”と宣言しているかのような、素敵な演出だと思う。
また、歌っているのが井上あずみさんお一人なので、彼女の澄んだ歌声を堪能できるバージョンであると言える。
②五月の村
サツキとメイが引っ越してくる最初のシーンや、河に水を汲みに行くシーンで流れる、さわやかで温かい雰囲気のオーケストラ曲。
まさに歌うように、メロディーを奏でるストリングスの音色が素晴らしい。
聴いていると、曲名のとおり、新緑の森や田んぼ、さわやかな陽気や風がイメージできる。
心がふわりと軽くなるような、そんな優しいメロディーと楽しげなサウンドが魅力的な、素晴らしい曲。
そんな良曲のオーケストレーション(編曲)を担当されたのが、エレクトーン・電子オルガン奏者の平部やよいさん。平部さんはこの曲の他、10・15・16・17・18曲目に、オーケストレーターとして参加され、素晴らしいオーケストラ編曲を聴かせてくれている。エレクトーン奏者らしい、色彩豊かなアレンジが見事。
平部やよいさんは、当時の久石さんの作品にいくつか参加されており、ジブリ作品ではトトロの他、次作『魔女の宅急便』のサントラの編曲・オーケストレーションも担当されている。
③オバケやしき!
シンセサイザーによる曲だが、ピチカート・ストリングスやクラリネット・木管楽器の音色を多用しているので、どこかアコースティックな味わいも感じられる作品。また、素晴らしいパーカッション・アレンジも聴きどころ。
楽しく跳びはねるかのようなメロディーが愛らしくて魅力的。
映画本編では、引っ越し先にと到着したサツキとメイが、木のトンネルを駆け登り、初めてオバケやしきのような家と対面するシーンで使われている。
また、階段を探して、家の中を駆け回るシーンでも使用された。
この「オバケやしき!」のサントラ版では、本編で未使用となったコーダ部も収録されている。これは、「風のとおり道」のメロディーのショート・バージョン。
わずかな時間の曲だが、静かで幻想性を感じさせる音色を味わうことができる。
楽しくにぎやかだった前半部分とは対照的なサウンドになっており、久石さんの美しいシンセサウンドを聴くことができる。
④メイとすすわたり
原曲はイメージソングの「すすわたり」。イメージソングでも聴かれた、人声を加工した面白いサウンド・エフェクトが使われている。
ただ、この曲に関しては、映像の動きに合わせた編曲となっているので、突然、曲調が変わったりする構成になっている。
“すすわたりのテーマ”から、フル・オーケストラのトゥッティによるダイナミックなアルペジオ風サウンド。そして、“オバケやしき!のテーマ”にオーケストラ・ヒットを加えたバージョンと流れていく。
フル・オーケストラの所は、メイが壁のすき間に指をそっと入れて、すすわたりの大群が一気に出てくるシーンで使われた。一匹だけ目の前に降りてきたすすわたりを、メイが手で“パン!”と捕まえる所と、オーケストラのトゥッティ・サウンドがピッタリと合っているのが印象的。
⑤夕暮れの風
「風のとおり道」のメロディーのアダージョ・バージョン。
ゆったりとしたフルートや、オーボエとストリングスの音色が美しい。癒される曲調で心地良い。
映画本編では、サツキとメイが引っ越した日の夕暮れ。カンタのおばあちゃんが家に帰って行くシーンから、夕食の支度をしているシーンの辺りで流れている。
「風のとおり道」のメロディーは5音音階を基調としているので、ゆったりとした静かなアレンジでも、とてもよく合う。日本の夕焼け空を連想させるような、郷愁あふれる優しいサウンドが素晴らしい。
⑥こわくない
この曲は、大きく分けて2つの部分から成る。
まず、オーケストラ・ヒットの音も使った、緊迫感あるサスペンス・タッチの曲。トトロの世界観とは、一見合わなさそうな曲調だが、本編ではボリュームを絞った上で、お風呂でふざけあう(暴れる?)シーンで使われている。
“すすわたり”のサウンドエフェクトをはざんで、後半は「風のとおり道」のアレンジ・バージョン。
メロディーにはベル系の音を使っており、原曲版に近い音色を使ったアレンジで、家から逃げていくすすわたり達を表現している。
⑦おみまいにいこう
OP主題歌「さんぽ」のインストゥルメンタル・バージョン。
「さんぽ」の伴奏に比べて、素朴でシンプルなアレンジとなっている。
生オケではなく、シンセの音による演奏だが、クラリネットの音など、やわらかな木管系の音色により、可愛らしい雰囲気のアレンジとなっている。
映画本編では、お父さんとメイとサツキの3人が、自転車に3人乗りして、お母さんの病院へお見舞いに向かうシーンのBGMとして使われた。
「さんぽ」のメロディーによるインスト曲としては、この曲が唯一のトラックとなっている。
⑧おかあさん
イメージ・ソング集の「おかあさん」をもとにした曲。
優しく温かなメロディーラインを、井上あずみさんがスキャットで歌っている。井上あずみさんの透明感のある歌声と、とてもよくマッチしたメロディー。
この“おかあさん”のメロディーは、劇中で何度かアレンジを変えて流れているが、サントラに収録されているのは、お見舞いの帰り道で流れたバージョン。
映像のシーンの長さに合わせたアレンジなので、ごく短いものとなっているが、ぜひフル・バージョンでも聴きたい名曲。フル・バージョンはイメージ・ソング集の8曲目に収録されている。
久石さんらしい抒情的な旋律を堪能することができる。
⑨小さなオバケ
メイが初めてトトロに遭遇するシーンのBGM。
映像の動きにピッタリと合わせて作られた楽曲となっている。
メイが「おじゃまたくし!」と言って、水に手を入れるカットから、中トトロと小トトロを追いかけて、大樹の所まで行くシーンの音楽だが、メイの動きや中トトロ&小トトロの動きに合わせた、音楽的演出が面白い。
フル・オーケストラできめ細かく作られているのが、このサントラを聴くとよく分かる。
個人的には、しゃがんだメイの所に、蝶々がフワフワと飛んでくる所の音楽が好き。フルートによる三連符の音型が、蝶々の動きにぴったりと合っているのが印象的。
また、メイがドングリを拾い集める所の、ブラス系の音による愛らしいメロディーラインも素晴らしい。
⑩トトロ
コーラス系のシンセ音と、ゆったり目のミニマル音型・マリンバサウンドが印象的な前半と、ストリングスによる主題歌「となりのトトロ」のメロディーのアダージョ・バージョンの、後半部から成るトラック。
前半の、幻想的な雰囲気ただよう“トトロ”のモティーフは、トトロの棲家にメイが転がり込んだ時と、雨降りバス停でサツキの横にトトロが現れるシーンで使用されている。
“パパパパパッ・パッ”という音型が特に印象的。ファンタジックな雰囲気のミニマル曲は、久石さんならではの魅力がある。
後半は、生ストリングスで優しくゆったりと奏でられる、主題歌のメロディーが素晴らしい。こちらは、トトロのお腹の上で、メイが眠るシーンで使われた。
⑪塚森の大樹
お父さんがメイとサツキを連れて、家の隣の神社へお参りに行くシーンでかかる曲。「風のとおり道」のアレンジ・バージョン。
原曲のイントロにあたる部分が拡大され、オーボエの音色によるメロディーが追加されている。
Aメロ以降は、ほぼ原曲通りのアレンジとなっているが、鳴っている楽器の音色数が原曲と比べて抑制されたものとなっている。お世話になっております。おそらく、映像のバックで鳴ることを考慮して、音の数を必要最小限に絞ったためと思われる。
そのためか、原曲よりも全体的にスマートになった印象を受けるアレンジとなっている。
⑫まいご
・作詞:中川李枝子
・歌:井上あずみ
サントラの12曲目「まいご」と13曲目「風のとおり道(インスト)」は、イメージ・ソング集に収録されたものが、そのままの形で収録されている。
アレンジの変更は無く、20曲目の合唱版「さんぽ」と併せて、ボーナストラック的な位置付けとなっている。
「まいご」は、井上あずみさんによる歌が収録され、そのメロディーは、16曲目「メイがいない!」の原曲となっている。
曲名のとおり、映画終盤のメイが迷子になるシーンで使われる、哀愁漂う旋律の元となった曲である。
(→参照『となりのトトロ イメージ・ソング集』レビュー 4曲目「まいご」)
⑬風のとおり道(インストゥルメンタル)
イメージ・ソング集にも収録されている、「風のとおり道」の原曲バージョン。
実際の映画本編では、この曲をもとにした作品が多く使われており、映画のもう一つのテーマ曲と言えるほど、重要な役割を担っている楽曲である。
このサントラにおいても、3曲目「オバケやしき!」、5曲目「夕暮れの風」、6曲目「こわくない」、9曲目「小さなオバケ」、11曲目「塚森の大樹」、15曲目「月夜の飛行」の6曲に、そのモティーフが使われている。
主題歌「となりのトトロ」のモティーフが使われているのは5曲なので、それを上回る使用度である。
その辺りから考えて、“トトロ”という“キャラクター”のテーマ曲としては、主題歌「となりのトトロ」のメロディーになるかもしれないが、『となりのトトロ』という“映画”のテーマ・世界観そのものを、最も深く表現したテーマ曲が、この「風のとおり道」であると言えるのではないだろうか。
⑭ずぶぬれオバケ
雨の日の、カンタがサツキに傘を貸すシーンや、雨降りバス停のシーンでかかるのがこの曲。
雨の雫を思わせるような、シンセサイザーのベル系の音色が、幻想的で美しい。
久石さんのミニマル系サウンドの中でも、この曲は音色数も少なく、静寂感と“間”を感じられる、侘び寂びの世界。
雨に煙る、日本の里山の風景や神社の不思議な雰囲気にぴったりな、静かで奥深い曲。
映画でも、雨の杜やお稲荷さんの映像にマッチしていて、とても印象深い曲となっている。個人的に、トトロの音楽の中でも、特にお気に入りの曲がこの曲。
ちなみに、このサントラでは、映画では未使用だったコーダの部分も収録されている。その部分は、主題歌「となりのトトロ」のメロディーのバリエーション・アレンジとなっているが、ファンタジックなサウンドが美しい。(傘を持ったトトロが、雨の雫を落とそうと、ジャンプする辺りのカットを想定した曲かも?)
⑮月夜の飛行
月夜の庭で、トトロたちとメイ・サツキが、ドングリの芽を大樹にしてしまうシーンから、トトロのコマに乗って空を飛ぶシーンのBGM。
楽曲構成としては、3つの部分に分けられる。
まず、小さな芽が大樹になる所の、フル・オーケストラによる上行形アルペジオを中心としたダイナミックなサウンド。木がぐんぐんと成長していく様が、音楽で見事に表現されている。
それに続いて、「風のとおり道」のヴァリエーション・アレンジ。原曲の基本アレンジをベースにしつつ、ストリングスの上下行形の対旋律が、特徴的なアレンジとなっている。そのストリングスの音型が、直前までのフル・オーケストラのパートの流れを、スムーズに受け継ぐ効果を生み出している。
3つ目は、主題歌「となりのトトロ」のメロディーのオーケストラ・アレンジ。
トトロのコマが、空へ飛び上がって行くシーンの曲だが、「となりのトトロ」のメロディーが、力強く、そして爽やかに奏でられ、最後は優しさあふれる温かなサウンドへと移行していく。
このシーンは、映画でも特に印象的なシーンだが、音楽もそのシーンを盛り上げる役目を見事に果たしている。
⑯メイがいない
イメージ・ソング4曲目、およびサントラ12曲目の「まいご」のメロディーをもとにした曲。
メイが迷子になってしまい、サツキが必死になって探すシーンで使われた曲。
このメロディーを聴いて、条件反射的に、サンダルが池に浮かんでいる光景が思い浮かんだ人は、かなりのトトロ・ファン。
楽曲構成としては、リコーダーの音色が印象的なイントロ部分から、トレモロ・ストリングスを経て、木管+ストリングスのオーケストラへと流れていくアレンジが素晴らしい。
原曲「まいご」の哀愁あふれるメロディーラインが、美しいオーケストレーションによって、よりエモーショナルなムードが漂うサウンドに昇華されている。
久石さんの抒情的なタイプのメロディーは、この曲のように、木管楽器の優しい音色と、とてもよくマッチする。
⑰ねこバス
イメージ・ソング6曲目のメロディーをもとにした、“ねこバス”のテーマ曲。
サントラ版は、ピアノ+オーケストラのアレンジとなっている。
映画本編の終盤、大クスの上に登ったトトロが、大声を出してねこバスを呼び、それに応えて、ねこバスが走って現れるカットから、この曲がかかり始める。
ねこバスの駆ける足さばきを表現したかのような、低音部のストリングスの音型が印象的。そのベース音にのって、ミューテッド・トランペットが軽快なメロディーを奏でている。
途中、オーケストラの音がピタリと止んで、ピアノの音だけの静かで愛らしい部分が挿入されるが、このピアノの部分は、映画ではちょうど、サツキがねこバスに乗り込んだシーンでかかっていた。
もしかしたら、映像に合わせての編曲だったのかもしれないが、楽曲単独で聴いた場合でも、サウンドの雰囲気が一瞬変わり、楽曲構成の上で見ても、聴き手を飽きさせないアレンジで、素晴らしい効果をもたらしている。
⑱よかったね!
サツキとメイが再会し、ねこバスが二人を乗せて、お母さんのいる病院へと向かってくれるシーンで流れる曲。
主題歌「となりのトトロ」のメロディーをもとにしたオーケストラ曲。
編曲は、映画のシーンの長さにピッタリ合わせて作られたと思われる。
ねこバスが二人を乗せて駆けて行くカットでは、フル・オーケストラで力強く奏され、病室のカットに切り替わると同時に、ストリングス中心の優しい音色のアンサンブルに変わるように構成されている。
曲の長さとしては短めの曲だが、映画のラストシーンに流れる曲なので印象深い。また、ここで「となりのトトロ」のメロディーのバリエーションでもある曲が流れることで、次のエンディングで流れる主題歌「となりのトトロ」への、スムーズな橋渡し的な(前奏的な)効果ももたらしていると言える。
⑲となりのトトロ~エンディング主題歌~
・作詞:宮崎駿
・歌:井上あずみ
映画のエンドロールに流れる、主題歌「となりのトトロ」のフル・バージョン。
曲自体は、イメージ・ソング集に収録されていたものと同じ内容となっている。
軽やかなミニマル風のイントロに続き、口ずさみやすい、世代を超えて愛される珠玉のメロディーが流れる。まさに、久石さんの代表作であり、傑作・名曲である。
アレンジに関しては、近年の久石さんはオーケストラがメインなので、コンサートでこの曲を演奏される際は、オーケストラ・バージョンで演奏されている。だが、原曲の方は、リズム・マシーンのドラムが軽やかなビートを奏でる、ポップな雰囲気のアレンジ。
この曲が流れると、子供たちが踊り出すという話を聞いたことがあるが、たしかにダンサブルでノリやすいアレンジとなっている。
なお、実際の映画本編で流れたものと、サントラ収録分とで大きく異なる箇所がある。
それは、楽曲のエンディングである。
映画本編では、“おしまい”のクレジットに合わせるように、優しく穏やかなメロディーによるコーダ部が流れて曲は終わるが、サントラの方は、半音、上の調に転調したうえで、サビのメロディーを繰り返しながら、フェード・アウトしていくように構成されている。
余韻やメロディーへの印象が強く残るのはサントラ版だが、楽曲として、きちんとコーダが流れて終わる、スッキリ感があるのは映画本編版のアレンジの方と言える。
⑳さんぽ(合唱つき)
・作詞:中川李枝子
・歌:井上あずみ、杉並児童合唱団
イメージ・ソング集版の「さんぽ」をもとにした、オーケストラ・アレンジ・バージョン。
イメージ・ソングのように、歌は井上あずみさんと杉並児童合唱団が歌っている。だが、伴奏はシンセではなく、生オーケストラで演奏されている。
本編では未使用のバージョンなので、いわゆるボーナス・トラック的な収録曲と言える。
全体的な雰囲気は、原曲を忠実に、オーケストラでアレンジしなおした感じだが、ストリングスによる対旋律が追加されていて、華やかな雰囲気となっている。
編曲は久石さんではなく、武市昌久さん。
ウィキペディアで調べたところ、80年代を中心に、アニメ・ソングの編曲を主に担当されていた方のようである。タイムボカン、あさりちゃん、かぼちゃワインなどなど…。(なつかしい…)
最近の作品はあまり載ってはいなかったのだが、記事によると、作曲家としての活動のほか、ミュージシャンとしてステージにも立つと書いてある。
久石さんのオーケストレーションとは、少々雰囲気は異なるものの、とても聴きやすい、親しみやすいオーケストレーションによる「さんぽ」となっている。
<総評>
久石さんの作品の中で、小さな子供から老若男女問わず、最も多くの人に親しまれている音楽が、『となりのトトロ』の音楽と言えるのではないだろうか。その“トトロ”の音楽の魅力を、余すところなく収められている作品が「となりのトトロ サウンドトラック集」である。
2つの主題歌はもちろんのこと、印象深い劇中音楽の数々も収録されている。
全20曲から成るサントラ集だが、本編で流れた音楽の中で、未収録の曲もある。(「おかあさん」のテーマのオルゴール風アレンジのものや、月夜の庭でのトトロのドンドコ踊りの太鼓の曲などが未収録)
とは言え、主要な楽曲は網羅された上、ボーナストラック的に、イメージ・ソング集からの2曲と「さんぽ」のオーケストラ版が収録されており、トトロファン必聴の名作アルバムと言える。
このサントラを聴きながら、映画のシーンを思い出すのも良いし、トトロの世界をイメージするのも良し。優しい音楽に癒されるのも良い。
楽曲の構成やアレンジに関しては、80年代における久石さんの初期の頃の作風=シンセサイザー(フェアライト)を多用した作風となっている。
同じようにシンセサイザーを多用していた「ナウシカ」や「ラピュタ」と比較すると、より優しくソフトで、そして透明感のあるサウンドが使われている。具体的に言うと、ナウシカの時のようなオルガン系の音色ではなく、鉄琴のような、ベル系の音色を主に使ったミニマル・サウンドが印象的である。
また、舞台が日本ということで、「風のとおり道」や「ずぶぬれオバケ」のように、5音音階を主体とした、“和”を感じさせるメロディー・ラインも印象的なものとなっている。
シンセサイザーの曲のほか、オーケストラ・サウンドによる曲もあり、曲調や音色も、バラエティーに富んだ聴き応えのあるサウンドトラック集である。
なお、久石さんのジブリ音楽は、次作『魔女の宅急便』以降は、シンセサイザーの比率がぐっと下がるので、シンセ・アーティストとしての久石さんの曲を堪能できるのは、「ナウシカ」「ラピュタ」「トトロ」の3作品と言える。
また、サントラのブックレットに、編曲:平部やよい(2、10後半、15後半、4、5、6)と記載されているが、これは誤りで、正しくは(2、10後半、15後半、16、17、18)である。(※平部やよいさんのホームページの記載より)